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DATE | 2025.3.14 FRI. | 12:00-13:00 JST

さて、今年の量子芸術祭はいかがだったでしょうか。最終日はウェビナーに参加されたり、ウェブ上で作品をご覧いただいたりしたみなさまからのフィードバックをもとに、5日間を振り返ります。さらに次回の量子芸術祭に向けて現在進行中のプロジェクトなど、その展望をご紹介します。

白澤貴司(株式会社日立製作所 研究開発グループ)×上條昌宏(編集者、ライター)×森 旭彦(サイエンスライター)

進行:太田美紀(株式会社アクシス)

イントロダクション

 

本プログラムでは、第1回から今回までの量子芸術祭の総括を行い、量子技術とアートの関係を振り返るとともに、今後の展望について議論しています。サイエンスライター、デザイナー、編集者らが登壇し、量子技術の未来と芸術の役割についての考察を共有しました。

 

量子芸術祭についてのFAQ

 

太田:本日までのプログラムに加え、過去の芸術祭を含めて、参加者のみなさまから質問をいただいています。その代表的なものにお答えしていきたいと思います。最初の質問はそもそも「量子芸術祭とはなんですか?」というものです。

白澤:量子芸術祭は、量子コンピュータが切り開く社会や世界のユースケースを芸術表現を通して探究する場です。芸術や研究に関してはアートを通じて新たな問いや視点を見出し、自分なりの解釈や対話を促進することを目的としています。AIによるクリエイティビティの補完やAIとの共存方法、量子コンピュータが実装された社会のあり方について考える対話が生まれます。これが芸術祭の醍醐味です。

太田:続いては「量子芸術祭はどのように始まったのでしょうか?」。

 

白澤:量子技術については誇張されて伝わっている部分があり、正しい理解を促すために始まりました。また、オープニングプログラムで水野さんが語っていたように量子技術の研究はまだ暗中模索の状況にあり、参加アーティストや試聴された一般の方の反響を研究者にフィードバックすることで、研究者へのエンカレッジにもなればと思っています。

:先進的な技術ほど社会の理解をコントロールする難しさがあります。例えば、遺伝子組み換え技術は正しく理解されていない例だと思います。量子技術も同じ課題に直面する可能性があります。そのとき芸術の役割をどう考えていったら良いと考えますか。

 

白澤:芸術とは、体験や他者との対話や議論を通じて、事象を自分ごととして捉えることができるものだと思います。答えをもらうのではなくて、問いを立てることで事象について捉えていくことが重要なのではないでしょうか。

太田:3つ目は、一番多い質問として「なぜ量子と芸術を掛け合わせたのですか?」というものです。

 

白澤:「量子技術」の研究と「芸術」の向き合い方が似ている部分があり、それは、どちらも未知を探求し、新たな問いをつくり出すことだと思います。そのため、それらを掛け合わせることで、新しい可能性が広がると考えています。

 

森:アーティストは「量子と社会」や「量子と人間」「量子と文明」などの接続点をつくっていくことができる、唯一の社会的プレイヤーだと思います。例えばバイオアートに関わるアーティストの視点を注視することで、バイオテクノロジーの課題や可能性、社会との接点が見えてくると思います。

太田:最後に「量子芸術祭にはどのような人が関わっているのでしょうか?」という質問です。

 

白澤:トップクリエイター、アーティスト、研究者、エンジニア、デザイナー、サイエンスジャーナリストなどプロフェッショナルな方々が参加しています。今回高校生も参加しており、彼ら・彼女らからの新しい視点の発言にハッとされられたり、研究者と面白い議論をさせていただきました。

 

リスナーからフィードバック

 

しりあがり寿さんが、「五感を捨てないと理解できないのではないか」とおっしゃって、そこが面白いと感じました。「五感をフルに使おう」などと言いますが、五感以上の知覚があったりするのだろうかとロマンを感じました。

 

ティナ・ロレンツさんのお話のなかで印象に残ったのは、レフィーク・アナドールの作品です。量子コンピュータによる芸術作品が、人間の記憶やコミュニケーションのあり方にまで影響を与えることが想像できました。

 

 

4回目に向けたこれからの活動について

 

上條:自分は書籍プロジェクトを担当しています。そこでは、量子技術の理解、「内閣府・ムーンショット目標6」に関わる研究者の方々の思い、量子と芸術のつながりによる可能性、社会実装に向けた取り組みなどを取材していく予定です。タイトル案は「問う量子」です。また、若い人に量子への関心を高めてもらうことも考えています。例えば、高校生と量子の教育プログラムを実施してくことも構想中です。

:人間は行動を起こすとき、核たるものがないとなかなか動き出せませんが、量子技術のユースケースは今動き出さないと二番煎じになってしまいます。自分たちはQ-STARと方々とともにアート作品を生み出し、次回の量子芸術祭で発表しようとしているのはまさにそういった取り組みです。

白澤:今回はウェビナーだけでしたが、来年度は芸術祭の醍醐味である、作品に触れて体験するといった五感で感じることを通じて、さまざまな問いをみなさんとともに考え、議論していけたらと思っています。どうぞご期待ください。

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貴司|Takashi Shirasawa

日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ ストラテジックデザイン部 `

リーダ主任デザイナー

2012年、日立製作所に入社し、情報デザイン部門在籍中はコーポレート報告書に関わるコミュニケーションデザインやブランディングなどに携わる。企画戦略ユニットにて研究戦

略立案や協創プロセス開発業務を経て、2019年より現職。デザインセンタにて、ビジョンデザインや行動変容デザイン活動に従事。

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上條昌宏|Masahiro Kamijo

編集者、ライター

1970年東京都生まれ。1992年株式会社アクシスに入社。30年近くにわたりデザイン誌『AXIS』の編集に携わる。2023年に同社退社後、現在は長野県塩尻市で暮らす。

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森 旭彦|Akihico Mori

サイエンスライター

サイエンスと人間性の相互作用や衝突に関する社会評論をWIRED日本版などに寄稿。ロンドン芸術大学大学院にてメディアコミュニケーション(修士)を学ぶ。大学院在学中に BBCのジャーナリストらを取材したプロジェクト『COVID-19 インフォデミックにおけるサイエンスジャーナリズム、その課題と進化』が国内外のメディアで取り上げられる。 https://www.morry.mobi/ ​`

量子芸術祭 Quantum Art Festival​

主催:量子芸術祭実行委員会 

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