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流通にのる前のプラスチック製品に情報を記載し、その管理情報を衛生データやブロックチェーンを用いて追跡・収集・分析することで、プラスチックの再利用を実現するためのクリティカルなプロジェクトです。リサイクル後にでき上がる世界共通の「コモン・プロダクト」も提案します。さて、未来に誕生する量子コンピュータを用いるとどうなるでしょうか?

plastic nexus
―量子技術のある未来社会に、素材はいかに循環するか 

飯場康三、米原丈博、本木裕介、中村健作(三井化学株式会社)×金本成生(株式会社スペースシフト)×

羽場廉一郎(株式会社シグマアイ)×藤原 大、ジョンシリ ラハット(DDI)

DATE | 2025.3.11 TUE. | 12:00–13:00 JST

イントロダクション(藤原 大)

 

ご紹介するのは、「量子技術と未来社会」をテーマとした議論を経て生まれた作品です。最初にプラスチック廃棄物の問題を将来的に解決する可能性のある技術の概念を描いた約2分のコンセプトムービーをご紹介します。

このアート作品としてのムービーでは、その後お話いただく専門家のトピックを描いています。リサイクル技術、量子コンピュータ、ブロックチェーン、人工衛星データなど、多岐にわたる先端技術を解説していきます。

プラスチックの多様性(飯場康三)

 

プラスチックは日常生活のあらゆる場面で利用され、人類の生活を下支えしている素材と言えます。

原料(分子)の繋げ方によって、多様なプラスチックをつくることができますが、その多様性がリサイクルを妨げる要因のひとつになっています。例えば、ペットボトルと自動車の外装材を混ぜてリサイクルすることは技術的に難しいのです。

 

EUの廃棄物管理の基本フレームワークと具体的施策(ジョンシリ·ラハット)

 

世界の動向としてEUを見ていきましょう。廃棄物削減のための法規制が導入されました。

2026年から、アパレル業界では、売れ残り品の焼却や埋め立てが禁止され、リサイクル可能なデザイン・設計が義務化されます。

食品はロスの削減目標が設定され、製造工程の透明性が求められ、QRコードなどを活用した追跡システムが導入されます。

 

 

トレーサビリティに関する研究から、分子トレーサーの活用(米原丈博)

 

廃棄プラスチックの状況や位置を正確に把握し、分別して収集するシステムがあれば、必要な時に必要なものを再利用することが可能です。

プラスチックを判別する技術として、分子トレーサー(光を用いた物質検知)が注目されています。分子レベルで識別することで、プラスチックの成分や履歴を追跡できるようになります。

課題は、検知技術の向上、膨大な情報を扱うことによる情報処理能力が求められます。

 

トレーサビリティに関する研究から、ブロックチェーンの活用(本木裕介)

 

情報をブロックチェーンという改ざんされにくい仕組みで共有し、安心してプラスチックを使い回すことのできるトレーサビリティの実現を提案します。

しかし、実用化には課題があります。膨大な情報を記録・管理するには多数のトランザクションが発生すること。次に誤った情報の入力を防ぎ、プロセスの信頼性を担保すること。膨大なエネルギー消費も課題の1つです。

 

 

地球観測衛星を活用した物質検知の可能性(金本成生)

 

現在は、光学衛星1,000機~、SAR衛星100機~の地球観測衛星網が実現済み。未来には10,000機以上のさまざまな種類のセンサーを搭載した衛星網が実現される可能性があります。

人工衛星を使えば、地球規模でゴミの分布やリサイクル拠点を監視できます。

光学と電波センサーを合わせた観測技術により、雲や障害物を超えてデータ収集が可能。

さらにそれにAI、量子技術を組み合わせることで、より精密なリサイクル戦略の構築が可能になります。

 

量子コンピュータの活用(羽場廉一郎、中村健作)

 

量子コンピューティングとは、現代のコンピュータの苦手を克服する未来型のコンピュータです。量子コンピュータの活用により、従来難しかった計算処理の高速化が可能になると期待されています。

膨大な材料の組み合わせを扱う、また化学現象を正確に再現するには、現状の計算能力には限界があります。

圧倒的な計算能力によって廃棄プラスチックのレシピ(原料は廃棄プラスチック、つくり方、予算)の作成が得られるようになり、循環型社会を実現するための、新たな計算技術の発展が期待されています。

 

未来社会のビジョン

 

リサイクルに関する意識改革が必要であり、ゴミではなく「資源」として活用する視点が求められます。プラスチック廃棄物を資源と捉え、循環型経済を実現するためのデザインや仕組みづくりが重要になると思いました。(ラハット)

 

すでに衛星データと量子コンピュータを組み合わせた開発を行っていますが、どういった社会課題に適用可能なのか、われわれがこれからどのような方向にむかって開発しなければならないか、具体的に考える良い機会になりました。(金本)

 

量子芸術祭に参加したことで、他分野の方と一緒に考えたり、アートを通じて自分たちの目指す将来像をジャンプさせることのできる機会になりました。量子コンピュータの活躍する未来の実現について期待したい。(中村)

 

コモンという概念は、共有資源の管理に関する議論でよく使われます。共有資源が、個々の利益を追求する行動によって枯渇・破壊されることを避けるためには、共同管理が必要です。資源ごみの循環型経済への移行は、このコモンの考え方がフィットすると考え、本プロジェクトを「コモン・プロダクト」と名づけました。(藤原)

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飯場康三|Kozo Iiba

三井化学 研究開発本部 ` 高分子・複合材料研究所 主幹研究員

2005年三井化学に入社し、現在まで継続し要素技術研究および製品開発業務に従事。専門は計算科学と高分子成形加工。博士(工学)。

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米原丈博|Takehiro Yonehara

三井化学 研究開発本部 ` 生産技術研究所 先端解析グループ 主任研究員

省エネルギー支援機能材、量子計算の課題に取り組む。材料設計、物質循環、反応制御、量子論に関心を持つ。以前は、大学機関、国研、民間企業において量子化学、反応動力学、非断熱電子動力学、大規模計算、MIなどの研究に取り組んだ。専門は分子科学、理論化学、光化学。博士(理学)。

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本木裕介|Yusuke Motoki

三井化学 デジタルトランスフォーメーション推進本部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部 データサイエンスグループ解析チーム チームリーダー

2011年金融エンジニアリング・グループ入社、銀行業界のコンサルティング、システム開発に従事。2022年より現職、DX 推進および量子計算の開発に従事。

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中村健作|Kensaku Nakamura

三井化学 研究開発本部 ` 生産技術研究所 先端解析グループ 主任研究員

東北大学工学研究科を修了後、精密機器メーカーに入社し、AI・機械学習に関する研究開発に従事。2021年三井化学に入社し、AI・機械学習や量子計算機を活用した材料設計に関する研究開発に従事。専門は物性物理学とマテリアルズ・インフォマティクス。博士(工学)。

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金本成生|Naruo Kanemoto

スペースシフト ` 代表取締役

1975年鳥取県米子市生まれ。神戸大学工学部卒業。少年時代は天文学者を志すが、大学在学時代にITベンチャーを起業。その後音楽業界、IT業界を経て2009年に宇宙ベンチャー、スペースシフトを起業。AIを活用した衛星データ解析ソフトウェア開発、非宇宙企業への宇宙ビジネスコンサルティングなどを手がける。

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羽場廉一郎|Renichiro Haba

シグマアイ ` 技術部 兼 経営企画部 リサーチャー

2022年より東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程へ進学。専門は量子アニーリング。同年にはシグマアイへ入社し、プロジェクトリーダーとして共同研究に従事。2023年からはマネージャーとして開発プロジェクトを指揮するなど活動領域を拡大。2024年より経営企画部を兼任して経営戦略の策定や組織運営にも参画。

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ジョンシリ ラハット|Rahut Jongsiri

デザイナー

武蔵野美術大学 大学院 基礎デザイン学コース修了。NAP建築設計事務所を経て、UDSに入社し、空間に設置するアート作品の計画やコーディネーション、家具デザイン、ブランドのアートディレクション、UX/UIデザインまで、さまざまなプロジェクトに携わっている。

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藤原 大|Dai Fujiwara

クリエイティブディレクター

2008年DAIFUJIWARAを設立し、湘南に事務所を構える。コーポレイト(企業)、アカデミック(教育)、リージョン(地域)の3つのエリアをフィールドに、多岐にわたる創作活動を続ける。独自の視点を生かし、企業のオープンイノベーションにおける牽引役としても知られている。国内外での講演やプロジェクトなど数多く実施。多摩美術大学教授。 https://www.daiand.com/ `

量子芸術祭 Quantum Art Festival​

主催:量子芸術祭実行委員会 

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