PROJECT 3-2
おいしい香りのリコンストラクション
—量子と香り
東原 和成 Kazushige Touhara
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授
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上田 麻希 Maki Ueda
アーティスト
「匂い」とは何でしょう? 私たちが日常で感じる匂いは、芳香分子が空気を通じて鼻に届き、その情報が脳に伝わるという複雑なプロセスの結果です。人間の嗅覚は薬学や医学で重要なので、分子レベルでのメカニズム解明に向けた研究が進められています。
音楽では和音を単音に分けたり、単音を組み合わせて和音をつくったりできます。それと同じように、匂いも分解・再構築できることがわかっています。この仕組みを利用すれば、近い将来、地球環境に配慮しながら人々が心地よく感じる匂いをつくれるようになるかもしれません。
上田麻希によるインスタレーション作品《OLFACTOSCAPE VER. 4 —分解と構築—》では、あるドリンクの香りを分解・再構築して体験することができます。量子センサーや量子コンピュータは、香りの世界でも役立つかもしれません。どんな可能性があるか、匂いに包まれながら一緒に考えてみませんか?
《OLFACTOSCAPE VER. 4 —分解と構築—》
ドリンク“X”の味わい方
誰もが知る親しみ深い飲み物=ドリンク“X”を嗅覚で味わうインスタレーション作品です。“X”の匂いを構成する重要な要素である10種の芳香成分を、ひとつずつ、円筒状のカーテンに噴射しています。
1. 目を閉じてください。
2. 手でカーテンを辿り、そのひとつひとつを嗅ぎながら一周してください。
3. 最後に空間の中央に立ち、それらが混ざったトータルな匂いを嗅いでください。“X”が何かがわかるはずです。
4. 答えを確認したい方は、[QRコード]を読み込んでください。
PROJECT 3-2 PROFILE
東原 和成(Kazushige Touhara/とうはら・かずしげ)
生命科学者、東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
1989年東京大学農学部農芸化学科卒業、1993年ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校化学科博士課程修了。 2009年より東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 教授。専門は生物化学で、嗅覚における匂いやフェロモンの受容機構を研究テーマに掲げる。
上田 麻希(Maki Ueda/うえだ・まき)
アーティスト
アートと嗅覚の融合を試みる「匂いのアーティスト」。匂いをデータや情報としてニュートラルかつサイエン ティフィックに扱い、空間インスタレーションというかたちで観客が体験できる場を産み出す。シンガポール 国立美術館、台湾国立現代美術館、ヴィラ・ロット・ミュージアム(ドイツ)、ミュゼ・デ・ラ・メ・ローザンヌ(スイス)、リード大学(米国)、清須はるひ美術館などで展示。